抜書

非常に大事な点であるので、長いが抜書しておきたい。山田真医師の講演後、会場からの質問に答える山田さんです。

小児科医が診た放射能と子どもたち (わが子からはじまるクレヨンハウス・ブックレット)

小児科医が診た放射能と子どもたち (わが子からはじまるクレヨンハウス・ブックレット)

Q 5歳と2歳の男の子がいます。夫はがれき撤去のボランティアなどで、これまでに5回くらい福島のいわき市に行っています。もうひとり子どもがほしいとずっと思っていたのですが、原発事故が起こって以来、夫が被ばくしていないかどうかも心配ですし、こういう状況で妊娠をしようかどうしようか迷っています。どうしたらよいかアドバイスをいただけたらと思います。

A 先ほど少しだけ触れましたが、「もう、うちの娘は子どもが産めないのではないか」とい(55/56)う福島のおかあさん方からの相談に対しては、わたしもすごく言いにくくて困ります。わたしは、基本的に子どもに障がいがあろうが病気があろうが、産んでいいんじゃないか、と普段は言っています。
 『AERA』が「福島の子どもたちからの手紙」(2011年9月5日号)という特集をしたときに「ふつうの子ども産めますか」という、子どもの手紙の一文がタイトルにされていました。「ふつうの子が産みたいか……」と思いました。「ふつうの子って何だよ」という感じがしたのです。
 実際に放射線問題があろうとなかろうと、いろんな子どもが生まれます。わたしは胎児診断も反対です。胎児の時期に診断して障がいがあるとわかったら産むのをやめるというのはいやなのです。どんな子が生まれてきても、受けとめてほしいと思っています。
 今回の事故がなくても、「妊娠を知らないでレントゲンを撮ってしまいました」という相談をよく受けることがあります。そのときに「障がいのある子が生まれてもいいじゃない」と簡単に言えないところがあります。とてもつらいです。
 食べるものなど、おかあさんが摂取するもので、なるべく被ばく量が少なくなるように努力して産んでほしいと思います。そして、どういう子が生まれるかということについてはあまり考えないでほしいと、個人的には思います。しかし、そういうことをいろいろ考えなければならないように、今回の原発事故でされてしまったわけですので、そんな原発はこの世からな(56/57)くさなければいけないと思います。