『現代思想』2010年6月号

現代思想2010年6月号 特集=ベーシックインカム 要求者たち

現代思想2010年6月号 特集=ベーシックインカム 要求者たち

渡邉琢「ベーシックインカムがあったら、介助を続けますか?」について。mojimojiさんがこのように書いているので、別の観点から。
渡邉さんが聞いているのが「介助者」つまり介助の経験がある人であることもまたポイントだと思う。介助の経験があれば、介助をすることによって得るお金以外のものはあると感じられるだろう。そしてそれが介助特有のものであることも、まぁいちおう認めることにする。他にそういう仕事はあるかもしれないが。ただ、障害者がいつもそういうものをもたらすとも限らないし、障害者がそういうものを介助者に与えなければいけないいわれもどこにもないことは押さえておくべきだ。そういうのを拠りどころにしてBIがあっても仕事を続ける、ってのはどうなんだろうと思う。要するに、mojimojiさんとは別の意味で「介助の経験がない人はどうなるの?」と思うわけです*1。そんなの、介助の経験がある人だけに聞いたら、バイアスがかかるに決まっている。そういうのを拠りどころにBI肯定していいの?と思う。結論としてはやはり、介助労働の待遇条件の悪さを何とかすることがより喫緊の課題だろう。それはBIとは無関係に議論できるはずだ。
以下は乱暴な覚え書きです。いまの世の中が「最小不幸社会」であれ何であれ、功利主義的に動いているとすれば、そこに出てきたのが「正義」の味方、ロールズ(BI)なんじゃないのか。BIも要は基本財の平等でしょうよ。功利主義批判として現れたロールズも、功利主義の核心を批判できていない。現に生きている人間を目の前に、功利主義ロールズもすべての人間を救うわけじゃない。BIが「生存の無条件の肯定」だなんて、実は嘘っぱちじゃないのか。

*1:しかしいつも思うが、僕やmojimojiさんの主張が、介助業界で非常に受けが悪い――倫理的すぎるとか、楽しくないとか言われる――のはなぜなんだろう?